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信じる力

 成績がふるわない子供たちの中には、よく「僕はバカだから」「○○さんみたいに頭よくないから、頑張ったって私には無理」というセリフを言う子がときどきいます。

 勉強を見ていると、確かに非常に基礎的な計算でつまづいたり、簡単な漢字がわからないままだったりします。新しい単元に挑戦しても、そういう基礎で足をすくわれて正解できず、ますます自信を失うということを繰り返してきたのでしょう。  でも、つまづいている計算を教えて理解でき、練習させれば、出来なかった子供は正解できるようになります。そこで思い切りほめます。ほめるときは一生懸命、必死にやります。「すごいじゃんか!」みたいな簡単な言葉です。でも「この子に、問題を乗り越えたこの一瞬が、いつまでも残るように」と念をこめてほめます。なぜなら、自信というものから遠ざかっている子供は、そう簡単に自分を認めようとしません。信じる力がとても弱くなっているのです。

 大人も一緒です。自分を認めている人はとても少ない。自信過剰だったり、夢想家はいますが、本当に自分のことを信じている人はどれだけいるのでしょう。1割もいないんじゃないかという気がします。あちこちに線引きをし、壁を作り、居心地がいい空間を作って「これが自分」と思うのは自由です。でも、本当に自分のことを信じることができたら、もっと大きな可能性が広がっているのにと思うと、もったいないというか、残念な気持ちになります。

 成績のいい子供は、こう言ってはなんですが、特別な頭があるわけじゃありません。生来の天才、秀才なんて1万人に1人じゃないでしょうか。みんな凡人です。ただ、彼らは自分を信じています。「このくらいの問題なら、やればできる」「難しいけれど、どうすれば解けるだろうか。方法はあるはず」って考えます。

 この「信じる力」というのは、簡単なようで、とても難しいことです。でも、信じることからスタートできれば、たいがいの困難は乗り越えられます。すぐにはできなくても、一歩一歩進む力にもなります。進み続ければ、必ず納得の結果が待っています。  「この子は必ず出来るようになって、自分に自信を持てるときがくる」と、私たち教える側がどこまで信じることができるか。私たちもまた「信じる力」を試されているのだと思います。

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